僕だけが正常な世界
僕だけが正常な世界
好きなテーマだし、つばさくんの舞台は2月の怖い絵依頼と期待して見に行った甲斐ある舞台でした。
以下、相変わらずのつぶつぶな感想です。時系列揃っていないです。
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今は身も心も貧しく慌ただしくて、繊細な人に寄り添える時間がなさすぎる、でもそれを言い訳にいていたらいけないんだと訴える舞台。
edのおにぎりを配るミチル、ゲンキの口が「ありがと」と言っているように見える。みんなの笑顔が溢れる場所に行けるミチルの未来はあったのだろうか。
穏やかでお互いを尊重し合う、そんな場所にミチルを連れて行ってあげたい
お父さんやお母さんの冷たさに目が向くが、最初から無関心だった訳ではなく、家のゴタゴタ、ミチルの問題行動が「親を困らせている」ように見えてだんだん食い違ってしまっただけ。
ゲンキとの会話で「まちがってた?」といちいち聞くところが悲しい。ゲンキだけは大事な関係で絶対に壊したくない気持ちが見えている。
お母さんとお姉さんのシーン。
ミチルが川の上流で警察に保護される。身体中ドロドロに汚れて
お姉ちゃん「まるでホームレスみたい、ね」
お母さん「嫌ね」
お母さん、ホームレスのサポートをしているのに嫌なのか!他者から賞賛されるためのサポートなのか。ミチルから目を逸らすためのボランティアであり、親身になっていない。そういう点が周りには通じていて、義弟からは「部活と一緒だろ?」だの、夫から「好き勝手やっている」と批判されてしまうのかも。「対象に真摯に向き合っているか」を真剣に考えるシーンになっている。
夜の精がヒカリに出会ったところが悲しく美しい、宗教画のよう。
再会を喜ぶ餅や薪と違って、小鳥のピーちゃんはヒカリの死の原因だからか物陰に隠れている。それをヒカリがまっすぐな笑顔で見つけて抱き合って喜ぶ。ヒカリはピーちゃんのせいで事故に遭ったと思っていない、ピーちゃん以外は誰も死の原因と思っていない。鳥だって知性がある。それを思ってミチルは食べ物に制約を課しているのだろうか。
ミチルの自然な微笑みは1回だけ見える、思い出の扉を開け、おばあちゃんと会い、「ミチル、大きくなったねえ」の時に振り返って微笑むところ。でも次の「もう社会人かい?」で微笑みはサッと無くなり、ガラスの表情になってしまう。自然で親密で穏やか、それを当たり前に享受できるのが家族なのに、思い出のおばあちゃんに会った時、それも一瞬しかならないのが悲しい。
ミチルの細かいところを覚えていて「あれは僕の部屋だ」は、胎児の時の記憶なのだろうか。
自分だけの部屋であった子宮から出て、おじいちゃんが建ててくれた離れの赤ん坊時代までは幸せだったが、その後の母屋での生活は「僕の居場所(お母さんと二人だけで過ごせる場所)がない」に繋がるのかな。
「僕だって誰かの役に立ちたいよ」(ここで毎回胸が詰まる)の気持ちの切なさよ。自立した「人」として社会に出たいのに、あまりに繊細で立ちはだかるものが多すぎる。
edで空気(ジャージの精)がミチルに「諦めないのが、君の取り柄だろ?僕も君を諦めない」とかけた声が届き、自分の息子と重ね合わせているミチルと目を合わせる。ミチルが青い鳥を見つけ、ライトが変わりミチルのいないステージ(空気の仕事場)になり青い鳥は去る。
空気は俳優を続ける、青い鳥の羽をのこして。
ミチルは空気(ジャージの精、青い鳥)に「声をかけ続けることで目を合わせてくれない息子ともコミュニケーションが取れる未来が来るかもしれない」という救いを与え、
空気はミチルに「精霊たちが見守ってくれていることと、諦めなければ前に進める」希望を与えた。
ミチルは「誰かの役に立ちたい」と涙をこぼしたけれど、確かに空気の役に立てていた。テルミのボランティアは「自身が意識的に行う」役の立ち方だったが、無意識でも人の役には立てているんだよ、とミチルに伝わるといいな。
白いお化けになって「みんなには僕がこんな風に見えている」
のシーン
家族は「離れをミチルに返してあげてよ」と一生懸命なのに、ユウサクおじさんは(自分の住むところがないにせよ)なぜ返してあげないのか。
自分は寺も継げず、勘当されていて、親の庇護の下にない(成人しているので当たり前だけど)
なのにミチルはお母さんにご飯を作ってもらい、お父さんはテルミさんのお産の後に養生できる離れを作ってあげた。兄-兄嫁-ミチルに対してコンプレックスをもっているのだろうか。子どものまま大きくなった大人。
ユウサクおじさんが家族の説得に応えて、離れをミチルに渡したらどうなったか考える
ミチルは離れに篭りきりになるんじゃないだろうか。ユウサクおじさんは乱暴な手段だけどミチルを外に向けさせるファクターになっていたのでは。全くミチルは納得していないけれども。
でもただ外に出すだけではダメ、青い鳥を見つけて「僕には味方がいる、希望がある」ことを知ってから外に出なければ。それができるのが家族ではなかったことが悲しいけれど、苦しんだ先に青い鳥と出会えたミチルは本当に救われた。